自社の従業員の育成や能力開発を実施する際には、「人材開発支援助成金」の活用が推奨されます。訓練や研修にかかる経費や、育成中の賃金などの助成が実施される本制度は、コストをカバーしつつ従業員のスキルアップを進められます。
特に従業員の能力を段階的かつ体系的に開発していける「人材育成支援コース」の利用は、多くのメリットにつながるでしょう。本記事では、人材開発支援助成金の「人材育成支援コース」について解説します。
従業員の育成および能力開発を進める際には、訓練・研修などの実施が考えられます。その際にかかるコストは人材開発支援助成金などの制度を活用することで、補填が可能となります。以下では、人材開発支援助成金の基本について解説します。
人材開発支援助成金とは、厚生労働省が提供する支援制度の1つです。仕事で必要になるスキル獲得のための職業訓練などを実施する際には、多くのコストがかかると予想されます。経費や期間中の従業員の賃金などにかかる経済的な負担を軽減できるのが、人材開発支援助成金の特徴です。
自社の業務に必要となる専門知識・技術を身につけるための訓練や、IT・デジタルスキルの獲得に必要な研修を実施した際に、一部のコストを助成する制度となっています。人材開発支援助成金を上手く活用することで、スムーズに従業員の育成プランを計画できるようになるでしょう。
人材開発支援助成金を申請することで、従業員のスキルアップをサポートしやすくなります。人材開発支援助成金は訓練や研修の費用を助成するだけでなく、有給休暇の取得制度や労働時間の短縮制度などを通して、従業員の自発的な能力開発を促した場合の金銭的な支援にも活用できます。
従業員が自分から積極的に能力開発を行える職場環境が構築できれば、継続してスキルアップを進められます。長期的な視野を持って従業員の成長を促せるため、社内全体の能力を高められるのも魅力です。
人材開発支援助成金には、2024年11月現在で6つのコースがあります。それぞれのコースごとに助成内容や受給条件などが異なるため、自社の目的や環境に合ったものを選ぶことが重要です。具体的には、以下のコースが人材開発支援助成金の制度に含まれます。
各制度は厚生労働省のホームページで確認できるため、事前に詳細を把握しておきましょう。
人材開発支援助成金のなかでも、幅広い訓練・研修に適用される「人材育成支援コース」は、特に注目を集めています。人材育成支援コースを活用することで、人材開発に関するさまざまな目的の達成を目指せるでしょう。以下では、人材育成支援コースの概要を解説します。
人材育成支援コースとは、令和5年4月に新設された人材開発支援助成金のコースです。以前の特定訓練コース・一般訓練コース・特別育成訓練コースの3つに分類されていましたが、令和5年4月をもって人材育成支援コースに統合されました。
従来はコースごとに申請が必要でしたが、現在は人材育成支援コースに申し込むだけで制度の利用が可能です。人材育成支援コースのなかには、「人材育成訓練」「認定実習併用職業訓練」「有期実習型訓練」という種類があります。
訓練・研修内容によって適用される助成制度が変わるため、まずはそれぞれの特徴を確認して申請の準備を進めるのがポイントです。
人材育成支援コースの「人材育成訓練」とは、OFF-JTに関する助成制度です。OFF-JTとは、職場ではなく研修やセミナーなどによって能力を育成する方法を指します。現場で実施される通常の教育に含まれない研修・セミナー・eラーニングなどが該当します。
人材育成支援コースの「人材育成訓練」では、自社の職務に関連する知識・技術の習得につながるOFF-JTを、10時間以上実施した際に助成されます。OFF-JTを中心に人材育成を実施する計画を立てるのなら、人材育成支援コースの「人材育成訓練」を利用することが検討されます。
人材育成支援コースの「認定実習併用職業訓練」とは、職場にとって中核となり得る人材を育成するための支援制度です。職場を支える人材を育成・確保することを目的として、OJTとOFF-JTを実施した際に適用されます。
現場以外の場所で研修などを行うOFF-JTとは異なり、OJTは職場の先輩や上司について知識・技術を習得する方法となります。現場での実務を体験しながら、実践的なスキルやノウハウを獲得できるのが、OJTの特徴です。
人材育成支援コースの「認定実習併用職業訓練」では、このOJTとOFF-JTを組み合わせて、訓練・研修を実施した際に助成されます。OJTとOFF-JTを両方実行する必要があるため、より綿密に育成計画を立てることが求められるでしょう。
人材育成支援コースの「有期実習型訓練」とは、有期契約労働者などを対象にした支援制度です。具体的には有期契約労働者を、正社員に転換することを目的とした育成に対して助成が行われます。有期契約労働者とはその名の通り、雇用期間が定められている従業員を指します。
例えば契約社員などが、有期契約労働者に該当します。本来契約社員は、雇用期間が終了するたびに契約の更新などを交渉する必要があります。そのため雇用状況が不安定になりやすく、安心して働けないなどのデメリットがあります。そういった状況を改善するために、正社員への転換を企業側に求めるケースも増えています。
しかし、契約社員を正社員にする際には、さまざまなコストがかかります。そういったコストを考慮して、事前に訓練・研修を実施し、即戦力として自社に貢献してくれる人材に育てることが重要視されています。人材育成支援コースの「有期実習型訓練」を使うことで、正社員への転換時にかかるコストの助成が受けられます。
具体的には認定実習併用職業訓練と同様に、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練を実施することが、助成の条件となります。
人材育成支援コースを申請する際には、基本となる手続きの流れを把握するのがポイントです。具体的には、以下の流れで人材育成支援コースの申請が行えます。
人材育成支援コースの助成額と助成率は、あらかじめ決められています。各数値の詳細を確認し、どの程度のコストをカバーできるのか把握しておくことも重要です。
以下では、人材育成支援コースにおける各制度の助成額と助成率を解説します。
人材育成訓練における助成額と助成率は、以下の数値になっています。
<雇用保険被保険者の場合>
経費助成=45%(30%)
賃金助成(1人1時間当たり)=760円(380円)
<有期契約労働者の場合>
経費助成=60%
賃金助成(1人1時間当たり)=760円(380円)
<有期契約労働者を正規雇用労働者などに転換した場合>
経費助成=70%
賃金助成(1人1時間当たり)=760円(380円)
※()内の数値は中小企業以外の助成額・助成率
賃金要件、または資格等手当要件を満たす場合には、経費助成が15%(有期契約労働者を正規雇用労働者などに転換した場合は30%)、賃金助成がプラス200円(100円)で計算されます。
認定実習併用職業訓練の助成額と助成率については、以下の数値に定められています。
経費助成=45%(30%)
賃金助成(1人1時間当たり)=760円(380円)
OJT実施助成(1人1コース当たり)=20万円(11万円)
※()内の数値は中小企業以外の助成額・助成率
賃金要件、または資格等手当要件を満たす場合には、経費助成が15%、賃金助成がプラス200円(100円)となります。また、OJT実施助成も5万円(3万円)が加わります。
有期実習型訓練の助成額と助成率は、以下の数値になります。
<有期契約労働者の場合>
経費助成=60%
賃金助成(1人1時間当たり)=760円(380円)
OJT実施助成(1人1コース当たり)=10万円(9万円)
<有期契約労働者を正規雇用労働者などに転換した場合>
経費助成=70%
賃金助成(1人1時間当たり)=760円(380円)
OJT実施助成(1人1コース当たり)=10万円(9万円)
賃金要件、または資格等手当要件を満たせれば、経費助成が15%(有期契約労働者を正規雇用労働者などに転換した場合には30%)、OJT実施助成がプラスで3万円となります。
人材育成支援コースの助成金には、支給額に限度が設定されています。企業規模や訓練の実施時間などによって限度額は変動し、詳細は以下のようになっています。
<中小企業事業主、事業主団体などの場合>
10時間以上100時間未満:15万円
100時間以上200時間未満:30万円
200時間以上:50万円
<中小企業以外の事業主の場合>
10時間以上100時間未満:10万円
100時間以上200時間未満:20万円
200時間以上:30万円
1,200時間が限度時間(専門実践教育訓練の場合には1,600時間)
上記のほか、訓練などの受講回数にも制限があり、1労働者につき1年度で3回までと定められています。また1つの事業者が受けられる支給額は、1年度に1,000万円が限度になります。
人材育成支援コースを使って訓練・研修を実施する際には、メリットとデメリットがあります。以下では、人材育成支援コースにおける主なメリット・デメリットを解説します。
人材育成支援コースは、従業員に対して訓練や研修を有効活用した形でのスキルアップの機会を提供できます。単純にスキルアップや能力開発を目標に掲げても、具体的に何をすればいいのかわからず、成果を出せない事例も多いです。人材育成支援コースの利用はそういったリスクを排除し、具体的に動き出すきっかけを作れます。
人材育成支援コースでは、OJTとOFF-JTの両方をメインに進めることが検討されます。そのためOJTとOFF-JTに関する情報が集まりやすく、その後の訓練・研修で有効活用できる可能性が高まります。
人材育成支援コースの有期実習型訓練を利用することで、正社員の従業員を確保するきっかけが生まれます。派遣の従業員のなかに優秀な人材がいる場合には、即戦力となるように教育したうえで、正社員雇用することも検討できます。
人材育成支援コースおよび人材開発支援助成金の利用時には、申請から承認まである程度の時間がかかります。万が一申請書に不備などがあると、助成金の支給が認められず、再申請によってさらなる時間がかかる可能性もあります。
人材開発支援助成金の各コースの助成金は、実際に訓練・研修を実施してから支給されます。そのため訓練や研修にかかるコストは、まず企業が立て替える必要があります。必要なコストを計算したうえで、事業に影響しないように計画を立てることが求められるでしょう。
人材開発支援助成金を使うことでコスト面の削減が可能ですが、無理なスケジュールや目標を設定すると、従業員の負担が大きくなる可能性があります。負担が増えると心身に疲れが溜まり、肝心の業務効率が低下するなどのデメリットにつながることも考えられるでしょう。
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人材開発支援助成金の人材育成支援コースは、従業員のスキルアップや正社員雇用など、さまざまなシーンで活用できます。OJTとOFF-JTによる訓練・研修を実施するきっかけにもなるため、職場の育成環境を大きく改善することにもつながるでしょう。
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